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Day4 加齢が染色体不分離に与える影響について

出典:ラジオ「ドクターアドバイスで今日も元気!!」
今週のテーマ:「どうしてヒトは妊娠しにくいの?卵子凍結は必要なの?」

 

Day4Thursday

加齢が染色体不分離に与える影響について

Q1:前回はヒトの受精卵である胚の発育の段階で、染色体の過不足が高い割合で生じている事、それが人が妊娠しにくい理由であったり流産に至る理由だったりする事を伺いました。また、女性の年齢が上昇するほど、胚の染色体の過不足が起きやすくなることを伺いました。では、どうしてそのようなことが起きるのでしょうか?

それは、卵子が作られる過程に原因があります。

女性の卵子は、お母さんのお腹の中にいて生まれてくる前の胎児期にたくさん作られます。しかし、生まれてきた後からは新しく作られないことが知られています。

また、その卵子は、減数分裂の途中で活動を停止した状態であることも知られています。

その減数分裂は、排卵とともに活動を再開し、精子と受精することで完了します。

したがって、受精するまでの期間が長ければ長いほど、その間の加齢の影響を受けることになり、減数分裂の過程でのトラブルが起きやすくなります。

想像すれば容易なのですが、卵子は20年、30年、またはそれ以上の期間をズーッと卵巣の中で自分の出番を同じ状態を保ちながら待ち続けているわけです。当然その間のさまざまな環境的な影響を受けるわけで、出番までの時間が長くなると、期待された役割が果たせなくなることが増えてしまうのです。

このことが、女性の年齢が上昇すればするほど、減数分裂の際の染色体の不分離や早期分離が起きやすくなる背景となり、受精卵である胚の染色体異数性の問題が増える原因となります。

それに対して、男性の精子は、思春期以降に積極的に次々と作られるようになるため、加齢による影響を女性ほどは受けにくいと考えられています。

 

Q2:つまり、妊娠に至るまでの待機期間が長すぎると、卵子はうまく減数分裂ができなくなることが増えるため、受精卵である胚の異数性が増加するということなのですね。この減数分裂の際の染色体の分離の問題を治療することはできないのでしょうか?

染色体の不分離という現象やその原因となるメカニズムは、現在でも世界で最先端の研究者が少しずつ明らかにしてきているもので、現時点で有効な治療法というのはありません。

 

Q3:では、女性の年齢上昇に伴い妊娠しにくくなる問題を解決するためには、どのようにしたらよいのでしょうか?

それには、患者さん自身の個人的な取り組みと、妊娠する環境を支える社会的な取り組みが必要だと考えます。

患者さん個人個人においては、加齢に伴う卵子の老化ということが妊娠しにくくなる原因であることを理解して、ご自身が妊娠する機会を逃さないように老化を遅らせるような生活習慣を普段から意識したりする必要があるでしょう。また、限界は理解した上で、ご自身の体の中に状態の良い卵子があることを信じて、それに巡り会えるように治療を繰り返すことで結果が得られることがあると思います。

また、社会全体でも、妊娠を望む女性からその機会を奪わないような社会づくりや社会の理解はまだまだ必要であると考えます。

とくに強調しておきたいのは、年齢が上昇したから妊娠できないとか治療を諦めなければいけないということではないということです。ただし、生物学的には、加齢が女性から妊娠成立をさせる機会を減少させるものであることは明らかですので、それが社会全体での共通認識となるとともに、女性から妊娠する機会を奪わないようにする社会づくりを今後も進めることが、不妊で悩む女性を減らすとともに、新しい命の誕生を支え次世代の社会づくりにつながるのではないかと考えます。

 

では、そういった社会づくりに生殖医療がどのように貢献するのか?その一つの手法としての卵子凍結について、明日伺いたいと思います。

2025年1月9日

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