Day1 どうしてヒトは妊娠しにくいの?卵子凍結は必要なの?
出典:ラジオ「ドクターアドバイスで今日も元気!!」
今週のテーマ:「どうしてヒトは妊娠しにくいの?卵子凍結は必要なの?」
Day1 Monday
川越先生の診療について、今週のテーマについて
Q1:まずは、先生は普段どのような診療をされているのか、ご紹介いただけますか?
山形市大手町ARTクリニック川越医院の院長をしております、川越淳です。
産婦人科専門医、生殖医療専門医、女性ヘルスケア専門医のほか、日本抗加齢医学会専門医、日本卵子学会認定胚培養士などの資格を持っております。それらの資格は、生殖補助医療を含む不妊症の治療や、女性のホルモンに関係した疾患の治療、アンチエイジングなどの専門家であることを意味します。
そういった資格や知識を活かして、普段は、不妊症・不育症という、家庭にお子さんを望んでいるもののそれがなかなか叶わないで悩んでいる方の診療を中心に行なっています。
Q2:先生は産婦人科医としても主に不妊症の治療ということで、妊娠を望む方の治療を中心に診療されているとのことですが、いわゆる一般的な産婦人科診療との違いというものはあるのでしょうか?
一般的な産婦人科では、妊娠出産の管理や女性特有の疾患の悩みに広く対応します。
それに対し、私は、妊娠成立の手伝いや妊娠初期の管理を行うことにフォーカスした診療を行っています。
特に、当院は生殖補助医療実施施設として認定を受けており、体外受精や顕微授精、胚凍結、胚移植といったより高度で専門的な技術や設備を必要とする診療が可能な施設です。
妊娠を望んでいるけれどもなかなか叶わないでいる「不妊症」の方や、妊娠はするものの残念なことに流産を繰り返している「不育症」の方に対して、専門的な知識や技術を用いて診療を行える専門的な施設です。
2023年は、生殖補助医療のうち採卵手術を「224」件、胚移植術を「252」件実施し、胚移植あたりで妊娠率が「48」%と全国平均の「35」%よりも高い治療成績を残しており、自信を持って診療を行っています。
Q3:今回のテーマである「どうしてヒトは妊娠しにくいの?卵子凍結は必要なの?」について、どのような話をされるのか、教えてください。
およその概要として、
初めに、そもそもヒトという動物は妊娠しにくい生き物であるということ
続いて、妊娠しにくい理由として「染色体の分配に問題が生じやすい」という生物学的な問題があるということについて
さらに、その「染色体の分配に問題が生じやすい」ということがヒト妊娠初期において様々な問題を生じる理由であるということ、そして、女性の年齢上昇に伴って、その問題が起きやすくなるということ
最後に、それらに関係ないように思えるかもしれませんが卵子凍結についての話題について、それぞれ説明します。
Q4:ヒトは妊娠しにくい動物であるということですが、それはどういうことでしょう?
それは、1回の排卵周期で妊娠する確率が非常に低いということです。
マウスやウサギでは1回の排卵周期で性交渉があった場合に妊娠成立する割合は
95%と、ほぼ確実に妊娠成立します。
また、チンパンジーやヒヒなどの霊長類でも70−80%と非常に高率なのに対し、
ヒトが1回の性周期で適切に性交渉があった場合に妊娠成立する割合は20%
と極端に低いことが知られています。
したがって、不妊で悩んでいる方の中には、自分に何か問題があるのではないかと深く悩まれる方もいらっしゃいますが、まずは妊娠しにくいのが当たり前なのだということを受け入れていただいて、どうすると妊娠の可能性を近づけることができるのか、それを考えて実践していくのが不妊治療であるということを周知していきたいと考えています。
では次回以降でさらに詳しくお話いただけるということですね
2025年1月9日